海外直接進出における4つの留意点とは?

海外に自社の拠点を構えることは、現地でのプレゼンスを高め、本格的な進出の足掛かりとなります。現地法規制との関係、管理面や撤退時の問題など、予め知っておくべき留意点を簡単にまとめます。

  • 1.類型

    海外拠点の形式には、大別して、駐在事務所、支店、子会社があるといえます。

    駐在員事務所は、設置、清算が容易ですが、営利活動が制限されますので、準備段階のみのオプションとなります。また、本国企業と一体とみなされ、本国企業が無限責任を負います。

    支店は、主体としての活動に制限はなく、子会社に比べて設置、清算が比較的容易です。もっとも、やはり本国企業と一体とみなされ、本国企業が無限責任を負います。

    子会社は、本国企業から独立した有限責任法人ですので、本国企業へのリスクを遮断する上でも有効です。但し、設立と清算に手間がかかります。

  • 2.現地法の規制

    直接進出では、現地の法規制への対応が不可避となります。国により、また事業分野により、外資規制があり、新興国では出資比率規制があることが多いです。また、活動内容によって許認可や登録制が敷かれていることもあります。逆に、企業誘致のために税制面などでの優遇措置や経済特区が設けられていることもありますので、利用可能なものがあれば活用するべきです。

  • 3.労務管理

    現地の労働法は強行法規ですので、日系企業でも現地の労働法に従う必要があります。海外では労使環境が異なり、また新興国では賃金上昇への圧力も高いことから、労使紛争が生じるリスクは高いと言えます。また、どうしても現地に監視の目が届かなくなるため、現地従業員による不正も起きやすいです。

  • 4.税務

    現地拠点は、基本的に本国企業のためにありますので、配当、売買、ライセンス、貸付などの形で本国企業との間で利益移転がなされることになりますが、それらに伴う課税関係には十分注意が必要です。なるべく税務コストの低い方法を選ぶことが肝要ですが、移転価格税制(親子間の取引における価格設定を調整することで、利益を意図的に移転することを防止するもの)など、順守すべきルールもありますので注意が必要です。また、オフショアを利用する場合はタックスヘイブン税制をよく理解し、日本との間の租税条約の存在も意識することが大切です。

監修記事
樋口一磨

樋口国際法律事務所代表 樋口一磨

慶応義塾大学、一橋大学大学院、ミシガン大学ロースクール卒業。 日本とニューヨーク州の弁護士資格を持つ国際弁護士として、国際取引や海外展開の支援に強みを持ち、企業法務全般から身近なトラブル解決まで、国内・国外を問わず幅広い分野を親身にサポートする。

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