合弁契約で知っておくべき、10個のポイントとは?

合弁契約とは、複数の者が会社に資本出資するにあたり、会社の運営、各出資者の権利や役割分担等について、出資者間の契約として取り決めるものです。出資形態が株式である場合は株主間契約とも呼ばれます。合弁契約は、国内の会社を設立する場合でも活用されますが、外国に会社を設立するに際しては、外資規制がある場合は必然的に、またそれがない場合でも戦略的に、現地パートナーと合弁会社を設立することがよくあります。

しかし、法制度や価値観が違う企業との共同ですので、成功しても失敗しても、経営面や会社の将来についての意見が合わず、トラブルになるケースは多いです。

  • 1.合弁契約書の要否の検討が必須

    トラブル防止のため、合弁会社の設立に先立って、合弁契約書の作成の要否や内容について検討することが必須です。特に、自社の出資割合がマイノリティになる場合は、原則として多数決原理に従ってマジョリティである他のパートナーの意向によって運営が最終決定されてしまいますので、自社として確保しておきたい権利等があれば合弁契約を締結する必要性が極めて高くなります。他方、自社の出資割合がマジョリティである場合は、最終的には多数決によって運営をコントロールすることができますので、他の出資者が締結を希望しない限り、合弁契約を交わす必要性は低くなります。

    作成する場合、合弁契約は、当事者の数、役割、株式割合などによって、そのケースに即してオーダーメードされるべきもので、雛形に頼ることはお勧めしません。取り決めるべき内容も多いため、かなり詳細かつ複雑になる傾向があります。また、外国においては、現地の会社法において、出資割合に応じて与えられる権利の内容が異なるため、予めそれを確認することも重要となります。

  • 2.定款等とセットで検討

    海外現地法人は、原則として現地の会社法制に従って運用され、それに基づいて定められる定款や付属定款(Bylaws)等が基本的な運用ルールとなります。合弁契約は、それらに追加や変更を加える契約として機能することから、定款等に相当する規程類と合わせて検討しなければなりません。

  • 3.現地の会社法等の確認が必要

    外国の会社には、保有する出資割合に伴う権利や、定款等に記載がない事項については、現地の会社法等が強制的に適用されます。また、合弁契約の内容が、現地の会社法制においては認められない場合もあります。よって、合弁契約の要否と内容を検討する際には、それらの確認も必要となります。

  • 4.パートナーのデューディリジェンス

    合弁を組むパートナーについては、財務状況やコンプライアンス状況などについて、予め情報を得て、信頼できることを確認した上で進めることが肝要です。

    合弁会社を設立した後に、現地パートナーの財務状況が悪化すれば、こちらで合弁会社の財務を維持しなければならなくなります。また、現地パートナーに違法行為が発覚すれば、当方の信用にも悪影響が生じてしまいます。

  • 5.「名義借り」のリスク

    外資規制により、現地の資本が入らなければ会社を設立できないという場合、いわゆる名義貸し、すなわち経営には口を出さず名前だけ貸してあげると提案してくる者がいます。しかし、そうした取決めは通常違法である上、そのような者と安易に会社を設立したところ、法的にはマジョリティの名義貸人に会社を乗っ取られるケースもありますので、安易に応じてはいけません。

  • 6.経営権の確保

    合弁契約では、経営にかかる事項がひとつの重要ポイントとなります。

    出資割合においてマジョリティである場合は、それに相応した経営権を確保するべきことは当然です。他方、マイノリティとなる場合は、役員指名権や重要事項に対する拒否権を定めることで、少しでも経営、特に重大な決定事項に関する影響力を高めることを目指します。

  • 7.役割分担の明確化

    各出資者が担うべき役割についても明記することが望ましいです。これに関連し、ファイナンスに関する責任についても明確にしておくことが紛争防止に役立ちます。

  • 8.出資割合変動時の対応

    パートナーが持分を譲渡することを希望する時には、自社が優先して購入する権利を定めることが有用です。

    また、特に出資割合においてマイノリティである場合ですが、マジョリティの決定で合弁会社が増資されたときに自社の持分割合が希釈化しないよう引受権を確保することも検討するべきです。

  • 9.エグジット戦略の重要性

    合弁契約における最重要ポイントのひとつが出口戦略です。

    貴社として、利益を確定したい、あるいは損切りしたい等の理由で撤退したいと思っても、パートナーが反対していつまでも拘束されてしまう事態は避けたいところです。従って、結婚前ではありますが、離婚の方法と選択肢を詳しく取り決めておくことが肝要です。

    具体的には、自社がマイノリティの場合は、その保有持分をパートナーに買い取ってもらう権利(プットオプション)や、マジョリティの出資者が持分を譲渡するときは自らの持ち分も譲渡できるようにする権利(タグアロング)を定めることを検討します。逆に自社がマジョリティの場合は、他の出資者の保有持分を買い取る権利(コールオプション)や、自らが持分を譲渡するときは他の出資者の持分も併せて譲渡できるようにする権利(ドラッグアロング)を定めることを検討します。会社の目的が明確である場合は、所定の事由が生じたら会社を解散できるようにすることも一案です。

  • 10.自社と合弁会社との契約

    合弁会社とは、自社も様々な取引を行うことが通常といえますが、これをグループ内取引のように気楽に考えて契約書を作らないのはいただけません。

    合弁会社には他人資本が入っていることを自覚し、売買、販売代理、生産委託、ライセンス等についてきちんと契約書を整えるべきです。

  • 当事務所の合弁サポート

    当事務所では、国内はもちろん海外での合弁について、初期のご相談から、合弁契約のドラフト、レビュー、交渉まで丁寧にサポートいたします。

    外国の現地法制についても、独自のネットワークを通じた連携によりワンストップで調査いたします。

    英語での対応も可能ですので、お気軽にご相談ください。

監修記事
樋口一磨

樋口国際法律事務所代表 樋口一磨

慶応義塾大学、一橋大学大学院、ミシガン大学ロースクール卒業。 日本とニューヨーク州の弁護士資格を持つ国際弁護士として、国際取引や海外展開の支援に強みを持ち、企業法務全般から身近なトラブル解決まで、国内・国外を問わず幅広い分野を親身にサポートする。

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