国内・国際法務に関するコラム
2013年度司法試験合格者
先日、2013年の司法試験に2049人が合格したと発表されました。昨年より53人減で、受験者が減った影響などで、合格率は26.8%と、前年より1.7ポイント上昇しました。 しかし、思い起こせば、法科大学院が創設されたとき、合格者は70%程度との触れ込みでした。
貴重な青春期と莫大な授業料をつぎ込んだ、志高い若手の多くが、想定とかけ離れた合格率の前に膝をついています。
しかも、法曹人口が急に増え過ぎた一方で、その受皿が明らかに不足し、せっかく合格した熱意ある若手に就職難民が続出しています。
まだ過渡期とはいえ、この新しい制度が果たして成功だったのか、甚だ疑問です。
我々が受験していた旧司法試験時代、合格率は2%台でした。たしかにそれは狭過ぎる門だったかもしれませんが、その分、きちんと優秀な人材が選抜されていた側面もあったと思いますので、合格者を増やしたければ、単に旧試験での合格率を上げればよかったのではないかとも感じています。
現に、現行制度でも、法科大学院を修了しなくても受験資格が得られる「予備試験」経由では120人が合格し、その合格率は7割を超えています。これは、もともと、法科大学院は地域や経済力の格差がバリアとなることから、法科大学院に行かずともすむルートとして用意されたものですが、優秀な学生は、ショートカットとしてこの試験を利用していると言われています。
そうすると、これはもともとの目的と異なっているから、予備試験を廃止したり、受験資格を制限すべきという意見が出たりしています。
しかし、これは目的と手段をはき違えた議論と感じます。そもそも司法試験の目的は、優秀な法曹を選抜することです。そして実際、狭き門を通過した予備試験組は優秀といわれ、大手事務所の青田買いに合うくらいです。
多用な人材を排出するという点については、法科大学院制度と並存させることで達成できるのではないかと思います。
現行制度のもとで必死にがんばっている受験生の努力が報われるよう、制度が安定することを祈ります。受験生の皆さんとしても、完璧な制度はありませんので、どのような環境であっても、揺らぐことなくベストを尽くしてほしいと思います。
ちなみに、私が卒業した慶応大学の法科大学院は、初めて合格者及び合格率の双方で一位となりました。嬉しいことです。やはり、実務家教員の層の厚さが勝因ではないかと思います。
樋口国際法律事務所代表 樋口一磨
慶応義塾大学、一橋大学大学院、ミシガン大学ロースクール卒業。 日本とニューヨーク州の弁護士資格を持つ国際弁護士として、国際取引や海外展開の支援に強みを持ち、企業法務全般から身近なトラブル解決まで、国内・国外を問わず幅広い分野を親身にサポートする。