顧問弁護士 (7) ~顧問弁護士を「頑固者」に?~

顧問弁護士を活用していただくひとつの場面として、お取引先等との交渉において、顧問弁護士を「がんこ者」に仕立て上げて有利な条件の獲得を目指す、ということがあります。

仕入先にせよ販売先にせよ、取引条件を交渉するに際しては、自社にできるだけ有利な条件を得たいと思う一方で、有効な関係を壊したくないという思いから、自社の立場や要望を強く主張しにくいという側面があると思います。例えば、取引相手からでてきた契約書を見たところ、商品代金の支払い条件や商品の保証条件などが取引相手にかなり有利になっていて(相手からでてくる契約書は必ず相手に有利になっています)、なんとかしたいと思い、変更希望を申し入れたものの、取引相手から「信用していないんですか?」などと嫌な顔をされてしまい、それ以上言うと関係にひびが入りそうで躊躇するという場面があると思います。そのような場合、例えば、取引先に対して「いやぁ、私個人としては御社を信用しておりますので、細かいことは言わずに早く取引を始めたいのはやまやまなんですが、うちの顧問弁護士が、どうしても法的な観点からここの条件を直すようにとのことなんです。私も顧問弁護士にはいろいろとお世話になっていて、以前も言うことを聞かずに進めて痛い経験をしたこともあるものですから、意見を無視して進めることがなかなかできないのです。」というふうにおっしゃっていただきます。つまり、ご担当者個人としてというより、顧問弁護士がこだわっているから、という言い方をしていただくわけです。そうすると、取引先としては、頑固な顧問弁護士を煩わしく思うものの、貴社のご担当者に対しては悪い印象は持ちませんので、友好的な関係を維持したまま、貴社の要望を伝えることができます。

こうした伝え方は、弁護士が顧問という社内メンバーに準じた関係にあるからこそ可能なものです。顧問ではない、単にスポットで相談した外部弁護士ということですと、取引先に「で、貴社はどうしてその弁護士の言うことを聞かなければならないのですか?」と返されて終わりです。

顧問契約をしていただく場合には、このような形も含めてご活用いただければと思っております。
なお、弁護士の中には、こうした表現のされ方を好まない方もいると思いますので、予めご確認ください。

監修記事
樋口一磨

樋口国際法律事務所代表 樋口一磨

慶応義塾大学、一橋大学大学院、ミシガン大学ロースクール卒業。 日本とニューヨーク州の弁護士資格を持つ国際弁護士として、国際取引や海外展開の支援に強みを持ち、企業法務全般から身近なトラブル解決まで、国内・国外を問わず幅広い分野を親身にサポートする。

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