国際詐欺の特徴とは?投資系とロマンス系のパターンに要注意!

国際的な詐欺とは?

どの時代にも詐欺師というのはいます。人をだますというのは、相手の立場に立って心をつかむことが求められますので、詐欺師の頭脳レベルは一般に高いといえます。プロ集団となると手口も巧妙で、性善説で生きている善良な方は引っかかってしまいます。

能力が高い人は、それを世のため人のために使ってほしいところですが、それを悪のために使うと、悲惨なことになります。最近では、国際性に富んだ詐欺が増えています。SNSなどを通じて、外国の人とも気軽につながれるようになったためといえます。

国際的であるとは、

  • 投資先とされている会社が外国にある(ことになっている)
  • 紹介者が外国にいる(ことになっている)
  • 詐欺師本人が外国にいる(ことになっている)
  • 支払先が外国である場合

などが挙げられます。「ことになっている」としているのは、それらが本当に外国にあるのか、または日本人が日本で外国人のフリをしているだけの場合もありうるためです。

 

国際的な詐欺のパターン

国際的な詐欺は、大きく分けて「投資系」と「ロマンス系」があると考えています。

投資系は、外国の金融商品や、最近であれば暗号資産などに投資をすることで、大きなリターンを得られるとうたうものです。これはわかりやすいといえます。ただ、質が悪いのは、ほぼノーリスクであるように見せかけて、手数料などと称して、どんどんお金を巻き上げるパターンもあります。

 

ロマンス系と私が呼んでいるのは、このようなものです。まず、SNSなどで知り合った人物(通常は異性)と懇意になり、将来を誓い合う仲となった上で、

「自分の財産をあなたに郵送する(ものすごい金額の価値があるものとされます)。それが届いたら一緒に幸せに暮らそう。」

と持ち掛けます(一度も会ったことがなくても、そのような関係になることはありうるようです)。ところが、その荷物がどこかの国の税関など(なぜかドバイや東南アジアとされることが多いです)で引っ掛かり、それをクリアするために現地の弁護士に依頼する必要があるが、自分は何らかの理由(全財産を荷物に入れてしまった、洋上の仕事のため送金ができない、など)で支払えないので、立替てほしいと頼まれます。

こちらは、その荷物が届きさえすれば精算できると思い、頑張って建て替えると、弁護士や税関から「クリアした」との通知が届き、安心します。ところが、別の税関などで、また同じ問題が起き、今度はもっと大きな金額を要求されます。次第に怪しい、返してほしいと思っていると、都合よく「弁護士」などが登場し、助けてあげるのでお金を、、、と求められます。

これに似たようなものでは、「自分は資産家で、日本に移住しようと思うが、身内がいないので、資産を受け取ってほしい。受け取るだけでよく、きちんと手数料を払う。」などと、一見、ノーリスクのように見せかけ、上記同様に様々な名目でお金を求めてくるものもあります。

 

コロナ禍で増えた国際的な詐欺

コロナ禍になってから、急に増えたご相談があります。それは、国際的に品薄とされている医療用マスクやグローブの取引に関するものです。

ご相談者は、「マスクやグローブの国際的なメーカーから大量に仕入れができるつてがある(金額は、何百億円などというとんでもないレベル)。買主に取り次いでもらえれば、数%のコミッション(それだけで数億円)を支払える。」といった話を持ち掛けられます。

お金を出すのは買主であり、その点のリスクはないと考え、一生懸命に買主を探されます。あるいは、「買主」も決まっており、間に入るだけでももらえるとされているケースもありました。

「買主」からは、弁護士を通すように求められたり、一見、きちんとした契約書が送られてきたりするため、ご相談者はもちろん、私もしばらくは、真正なビジネスであるかの判断がつきませんでした。

しかし、いずれの案件も共通していたのは、誰もメーカーと直接つながっていないということです。その点を確認しようとすると、それらしい販売店などが伝えられますが、メーカーのホームページなどで確認すると、正規販売店ではないことがわかります。

結局、こうした案件は、買主から大金をせしめることを目的としつつ、当事者として多くの仲介者を介入させることで、責任の所在をわかりにくくしようと試みているものと考えるに至りました。

当事務所には、同種のご相談がかなりありましたが、結論として、クローズした案件はひとつも認識しておりません。

 

国際的な詐欺の特徴と巧妙さ

国際的な詐欺の入り口は、従来はメール、今はSNSが主であるといえます。いきなりメールが来ると警戒しますが、SNSでは、まず友達や「恋人」になり、心を開いてきた時点でその隙間に入って来られます。

日本人同士であれば、日本国内で実際に会うことや、紹介された投資対象などをウェブサイトで調べたりすることを考えると思います。しかし、相手が外国人であったり、投資対象が外国にあると言われると、そもそも実際に会って確認しようと思わず、また語学がわからないからとウェブサイトなどを確認しようとしなくなってしまいます。

ご相談者から、関連する情報を見せてもらうと、よく調べれば全て偽物であることがすぐにわかることが多いです。「弁護士」と称する者が登録されていなかったり、「銀行」と称するサイトのドメインが本物と微妙に違っていたりします。

国際的な詐欺では、金額が大きいことも多く、そんなうまい話があるわけないと思うのですが、日本人はどうも「外国には大きな話が眠っている」と妄想する傾向があるのか、信じてしまいやすいようです。

 

国際的な詐欺による損害

損害額は、最初は数十万円程度の比較的小さい金額であることが多いです。ちょっと立て替えてほしい、ちょっと手数料が必要になった、などと言われ、それくらいならという気持ちで出してしまいます。それが、100万円単位にエスカレートしていくのですが、人間の心理としては、怪しいと思っても、一旦お金を出してしまうと、「本当であると信じたい」という気持ちが勝ってしまうようです。

 

また、せめて出した分を回収したいと思い、ずるずると相手のペースに飲まれてしまいます。私の経験上では、個人の3000万円程度をつぎ込んでしまった方も知っています。その方は資産家では全くなく、むしろ借入れをしていたため、なんと自己破産を余儀なくされました。。。

 

国際的な詐欺による損害の回復

詐欺は、国内であっても相手方を特定することはとても難しいものですが、それが外国となると尚更です。しかも、つながりがバーチャル空間のみであることがほとんどであるため、そもそも当方が認識してる人物などが実在しているかどうかもわからず、むしろ通常は実在していません。

そうなると、そもそも相手方の尻尾をつかむことすら極めて困難ですので、残念ながら損害の回復は現実的にほぼ不可能です。せいぜい、警察に被害届を出しておく程度しかできません。しかし、警察は積極的に被害回復を図ってくれるわけではありませんし、外国のこととなれば警察権も及びません。

ごくたまに、国内の詐欺集団が、国際を装った詐欺(実際は国内で行われているが、外国が拠点であるかのように見える)をしていたことで検挙されるニュースを目にしますが、それでも、その詐欺師に賠償能力がなければ被害回復は事実上困難です。

 

国際的な詐欺に遭わないために

従いまして、当たり前ですが、そもそも詐欺に遭わないことです。
日本人は、上記のように、友達などになって心を許してしまったり、外国人というとなぜか信用してしまう傾向がありますので、まずはそれを自覚することです。

そして、「うまい話」には必ず罠があることを改めて認識し、ネット上で結構ですので、関係する情報を調査しましょう。ご相談者の中には、パスポートのコピー、弁護士と称する者からの通知、公的機関のマークが入った書類、聞いたことがある金融機関などが登場すると、それらが本物であるかを確認しないまま信用してしまう方が多くいらっしゃいます。

少し調べれば、パスポートは名前と写真だけが鮮明で上書きしたことが伺える、弁護士は存在しない、公的機関のマークはコピペ、金融機関のドメインは似て非なるもの、といったことがすぐにわかります。そうしたことがひとつでもあれば、詐欺です。

少しでも不安があれば、第三者、できれば弁護士に相談しましょう。うっかり一度支払ってしまった場合は、なまじ損害を回復しようとしてドツボにはまることを防ぐため(詐欺師も、疑われた場合の対応策を持っており、プロですから、こちらより上手です)、以後、一切の関係を遮断し、絶対に追加の支払いをしないことです。

国際弁護士としてできること

上記の次第ですので、弁護士としても、事後的な対応は極めて限定されます。ほとんどの場合、ご相談時に手元で調査をすると、詐欺であることがわかり、しかし相手方の尻尾をつかめず、「残念ながら勉強代です」とお伝えせざるを得ないことが多いです。国際弁護士を頼ってご相談いただくのに申し訳ないと思いつつ、限界を感じるところです。

よって、できるだけ事前にご相談ください。少しでも怪しいと思った段階でご相談いただければ、多くの場合、真偽の判断はつきますし、それが曖昧なケースでも心の準備ができます。

 

当事務所のサービスと費用

詐欺被害に関するご相談は、まずは初回ご相談料(30分5000円。税別)にて対応し、状況に応じて別途のお見積りをさせていただきます。

もっとも、上記のとおり、詐欺事案は回収が困難であることが多いため、明らかに回収が困難と思われる事案については、お問合せをいただいても有効な助言を提供することは困難となりますので、予めご了承ください。

監修記事

樋口一磨

樋口国際法律事務所代表 樋口一磨

慶応義塾大学、一橋大学大学院、ミシガン大学ロースクール卒業。

日本とニューヨーク州の弁護士資格を持つ国際弁護士として、国際取引や海外展開の支援に強みを持ち、企業法務全般から身近なトラブル解決まで、国内・国外を問わず幅広い分野を親身にサポートする。

事案を問わず、そして国内外を問わず、お気軽にご相談

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