社外取締役と弁護士の関係について

社外取締役とは

社外取締役とは、株式会社の機関のひとつである取締役のうち、社外性の要件を備えた者といいます。
会社は、取締役会または(取締役会がない場合は)取締役の合議による決議をもって会社の業務執行の方針を定めます。

そこで決定された方針に従い実際に業務を執行するのは、取締役会で選任される代表取締役または業務執行取締役となります。各取締役は、代表取締役または業務執行取締役となれば自らが業務執行を行いますが、同時に、取締役会の構成員として、他の取締役の職務執行の適正を監督する役割も担っています。

取締役の中にも、代表取締役または業務執行取締役とならない取締役もおり、それらの取締役は、取締役会決議を通じて意思決定に加わる他は、専ら他の取締役の監督を責務とします。
そのように、他の取締役の監督を主な責務とすること、すなわちガバナンスを担うという観点からは、組織や人間関係に左右されうる社内選出の取締役より、しがらみのない社外取締役の方が、より客観性の高い役割を期待できます。

そのため、コーポレートガバナンスコードでは、上場企業に対して社外取締役の選任が強く推奨されています。また、監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社では、監査等委員である取締役の過半数、また指名・監査・報酬委員会の構成メンバーの過半数は、社外取締役でなければならないとされています。

社外取締役が必要となる場合

日本の上場会社の機関設計には、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、及び指名委員会等設置会社の3タイプがあります。
このうち、社外取締役が制度上必須とされるのは、監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社です。

 

監査役会設置会社

監査役会設置会社は、伝統的な形態といえ、株主総会で取締役の他に監査役を選任し、監査役で構成される監査役会をもって取締役の業務執行を監督させるものです。この場合、社外取締役の選任は、法律上は義務付けられていません。もっとも、コーポレートガバナンスコード(原則4-8)が「独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである」と定めていることから、事実上、上場希望の多くが2名以上の社外取締役を選任しています。

 

監査等委員会設置会社

監査等委員会設置会社は、株主総会にて「監査等委員である取締役」を、通常の取締役とは別に選任し、「監査等委員である取締役」も参加する取締役会の他に、「監査等委員である取締役」で構成される監査等委員会を設置するものです(会社法399条の2)。監査役は、取締役会に参加して意見を述べる等の権限はありますが、取締役会の決議に加わるものではありません。そこで、業務執行取締役の監督を専業とする取締役を取締役会のメンバーとすることで、より統制を強めることが期待されます。イメージとしては、監査役が取締役会メンバーとして議決権も与えられるもの、ともいえます。「監査等委員である取締役」は、このように監査機能を発揮することが求められるため、その過半数は社外取締役でなければならないとされています(会社法331条6項)。

 

指名委員会等設置会社

指名委員会等設置会社は、株主総会で取締役を選任した上で、取締役会にて、取締役候補者の決定を担う指名委員会、執行役である取締役の業務執行の監督を担う監査委員会、及び取締役と執行役の報酬額の決定を担う報酬委員会という3つの委員会を構成する取締役を選任します(会社法400条)。これらの委員会は、取締役会の下部機関ともいえる位置付けとなるところ、その客観性と独立性を保つため、各構成メンバーの過半数は社外取締役でなければならないとされています。

社外取締役の役割

コーポレートガバナンスコード(原則4-7)では、独立社外取締役の役割・責務として、特に以下の役割・責務を果たすことが期待されると記載されています。
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(ⅰ)経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成
長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと

(ⅱ)経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監
督を行うこと

(ⅲ)会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること

(ⅳ)経営陣・支配株主から独立した立場で、少数株主をはじめとするステーク
ホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること

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日本では、伝統的に、自ら業務執行をする取締役を中心に構成される取締役会が意思決定をするという、いわゆるマネジメントモデルの経営スタイルが主流だったといえます。監査役会は、そのような取締役会に対し、外部から監督を及ぼすことを目的に設置されるものでした。

これに対し、欧米を中心とした会社では、業務執行については担当役員に大きな権限が与えられる(それにより機動的な意思決定が可能となります)一方、その他の役員は業務執行役員を監督することを責務として、取締役会の意思決定の範疇で監督を及ぼしていく、いわゆるモニタリングモデルの経営スタイルが多いと言えます。日本も、後者への移行が推奨されている時代と言えます。

社外取締役も経営を株主から委任された取締役ですので、企業価値の向上を図るべきことは当然です。他方、社外であることの意味は、経営陣や支配株主から独立した客観的な立場で、経営陣の業務執行を監督することで発揮されます。

つまり、経営陣の業務執行を監督し、企業に損害を与えるコンプライアンス違反や不正行為を防止し、適法で社会秩序に調和した経営を維持させることで、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与することが、社外取締役の役割であると言えます。

社外取締役の要件

社外取締役は、まず取締役としての要件を満たす必要があります。欠格事由(会社法331条)や定款による資格制限に該当する場合は就任できません。その上で、「社外」と認められるには、以下の会社法2条15号の要件を満たす必要があります。
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①当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第三百六十三条第一項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」という。)でなく、かつ、その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。

②その就任の前十年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。

③当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。

④当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。

⑤当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと。
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独立役員

独立役員とは、一般株主と利益相反が生じるおそれがない社外取締役または社外監査役として、証券取引所が定める者をいいます。上場企業は、証券取引所から、一般株主保護の観点から、1名以上の独立役員の確保を義務付けられています。社外取締役が必ず独立役員であるというわけではなく、またその必要もありません。

もっとも、実際には、独立役員の要件も満たす社外取締役が選任され、その旨の届け出がなされている例多いといえます。

社外取締役の適任者

社外取締役は、上記の要件を満たせば誰でも就任できますが、業務執行取締役の監督というガバナンス上とても重要な役割を果たすうえ、任務懈怠があれば株主に対する責任も負います。

また、業務執行の適正を監督するためには、会計や法務についての専門的な知識と経験が求められ場面もあります。

そのため、会社経営の経験者のほか、公認会計士や弁護士が選任されることが多いです。
弁護士は、業務執行全般について、コンプライアンスの遵守徹底、不正や違法行為の防止、法務リスクの抽出と予防などを行い、会社やステークホルダーに不測の損害が生じないよう意見を述べることができます。
公認会計士も弁護士も、職業としての独立性が高いうえ、公共の利益に資するために国家資格が与えられていますので、社外取締役としては適任といえます。

当事務所の対応

当事務所の弁護士は、幅広い業種のクライアントにつき、日常的に企業法務から紛争解決まで経営にまつわる案件を広く担当しているため、様々な会社において社外取締役としてもお役に立てると考えております。また、代表弁護士の樋口一磨は、東証一部上場企業の社外役員の経験があるほか、独立社外役員のためのガバナンス・トレーニング・プログラム「MIDコース」課程(日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク主催、東京証券取引所及び日本取引所グループ後援)も修了しております。
社外役員に弁護士をお探しであれば、お気軽にご連絡ください。

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