弁護士とリモート相談は可能?弁護士業とリモートワークについて

弁護士業もリモート化

 新型コロナウイルスの蔓延に伴い、社会全体において仕事のリモート化が進んでおり、それはウイルスが沈静化した後も引き続き活用されていきそうな気配となっていますが、弁護士業も例外ではありません。

弁護士のサービス変化

 
弁護士のサービスにおいては、前提としてクライアントとの信頼関係の構築が重要となり、そのためにクライアントとのコミュニケーションが大切になります。それ故、伝統的に対面での打ち合わせが好まれてきました。また、裁判などを利用した紛争解決にあたっては、手続法の要請から対面での出頭が原則とされてきました。
 
しかし、他の業種と同様、リモート化への変革を求められ、またそれに対応する中でリモートであることのメリットを積極的に活用するようになっています。当事務所もZOOMやTEAMSでのお打合せを頻繁に行っており、また裁判所もTEAMSでの争点整理手続きを活用するようになっています。

リモートによる法務サービス

弁護士による法務サービスは、大きく、紛争の予防と解決に分けることができます。

紛争の予防

予防というのは、プロジェクトの立ち上げ時など、まだ紛争が起きていない状態で、将来の紛争が起きにくくし、また紛争が起きた場合にも有利な立場となれるように手を打っておくことです。契約書の作成は、予防の代表例です。

それでも実際に紛争が起きてしまった場合の解決支援は、狭義での弁護士の専門領域といえます(予防はコンサルタントでもある程度できますが、紛争における代理は弁護士しか認められていません)。紛争解決は、交渉で着地できればよいですが、それが叶わないときは調停や訴訟などの法的手続をもって行うこととなります。

予防の段階では、状況が比較的整理されており、また目指すべき点(自社にできるだけ有利な契約書を作る等)も明確であることが多いので、リモートでのお打合せでも要点を整理して成果物をまとめていくことが十分に可能です。

法務サービス

他方、紛争が起きてしまっている場合は、事実関係やお互いの主張が複雑に絡み合っており、また解決に向けた「落としどころ」についての本音を語り合うことが必要となりますので、やはりできるだけ対面でのお打合せをする方がスムースであるといえます。もっとも、顧問先様などすでに信頼関係が構築されている間柄であれば、すべてリモートでの対応も可能です。

弁護士は、すぐに相談できるよう物理的にも身近にいた方が安心ではありますが、成果物などのやりとりもメール等で可能ですので、元々、遠方の弁護士に依頼することも十分に可能です。むしろ、専門性の低い、または信頼関係が薄い近くの弁護士よりも、専門性が高く信頼できる遠くの弁護士に委任した方が安心です。この点、リモート化が進むことにより、遠方の弁護士にもお気軽にご依頼いただける環境になるといえます。

リーガルテック

弁護士業界にもテックの波が押し寄せています。AIによる契約書のレビューや英文契約などの機械翻訳などもありますが、リモートワークとの関係では、リサーチするリソースのオンライン化が大きな変化といえます。

弁護士のサービスにあたっては、文献や裁判例を調査することが多いところ、裁判例については従前からオンラインのデータベース化が進んでいました。しかし、文献についてはほとんどハードコピーのみであったところ、最近、データベース化した書籍をサブスクリプション方式で参照できるサービスが出てきました。まだ参照できる内容が少ないですが、自宅や出先からリサーチする際には重宝しています。

裁判実務のリモート化

裁判をリモートで行うというのは、イメージがつかないかもしれません。たしかに、日本の裁判では、書面や証拠を出し合い、争点や和解について協議が多く、正式な書面の提出や証人尋問などは、実際に出頭する必要がありました。しかし、それらを「書面による準備手続」という手続の一環として、リモートで行われることが一般化してきました。

裁判実務の現状

裁判所は、裁判手続のIT化を従前から進めていたところ、新型コロナウイルスの件によりそれが促進された形です。裁判所はMicrosoftのTEAMSを利用しています。これまで、電話会議で進められることはありましたが、各当事者と裁判官の顔が見え、証拠などを参照しながら話ができることで、より安心して出頭しない選択をすることができるようになりました。また、当事務所としては東京以外の案件を受けやすくなりました。

もっとも、現時点(2021年1月)では、まだリモート手続は補助的な位置付けにすぎず、正式な書類の提出はオンラインではできません。そのためには民事訴訟法を改正しなければならないことから、時間を要します。

なお、欧米などでは、かなり前よりオンラインで裁判資料を正式提出できていた国があります。また、新型コロナウイルスの蔓延を受けて、証人尋問までオンラインで行うようになった国もあります。それらに比べると、日本の裁判手続のIT化はかなり遅れていると言えます。

公益活動や国際団体へのリモート参加

弁護士は、弁護士会の各委員会などにおいて公益活動を行っていますが、それらの会議はほとんどがリモートとなっています。
 
また、私のような国際弁護士は、国際法曹協会(IBA)などの国際的な法曹団体に参加し、情報収集やネットワーク作りをしています。しかし、新型コロナウイルスが蔓延してから、そうしたリアルの会議はすべて中止となり、いくつかのイベントがフルリモートで開催されている状況です。

私は、そのような会議への参加のため、年5~6回の海外出張がありましたが、2020年はゼロでした。世界中から弁護士が集まる会議ですので、リアルで開催できるようになるには、まだしばらく時間を要すると思われます。欧米主体のイベントが多いため、オンラインでの参加は時差もありなかなか大変です。もっとも、これまでに培ったネットワークのお陰で、業務に支障は生じていません。

当事務所のリモート対応

当事務所は、もともと地方のクライアント様にも対応しておりましたが、昨今の状況に鑑み、益々リモートを活用し、日本全国はもちろん、海外にいらっしゃる方にも、日本国内と同等のサービスを提供できるような体制を整えております。実際、北海道から沖縄まで、さらには欧米やアジアから、広くご依頼をいただいております。まずはお気軽にご相談ください。

監修記事

樋口一磨

樋口国際法律事務所代表 樋口一磨

慶応義塾大学、一橋大学大学院、ミシガン大学ロースクール卒業。

日本とニューヨーク州の弁護士資格を持つ国際弁護士として、国際取引や海外展開の支援に強みを持ち、企業法務全般から身近なトラブル解決まで、国内・国外を問わず幅広い分野を親身にサポートする。

事案を問わず、そして国内外を問わず、お気軽にご相談

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